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土田杏村(つちだ きょうそん):1891.1.15~1934.4.25、本名「茂(つとむ)」新潟県佐渡生まれ、東京師範学校博物学部卒、在学中に処女作を出し、ついで京都帝国大学哲学科卒、中外日報に入社するも、講演と臨時講師と著述をもっぱらとする。慢性病による発熱が続く中、精力的な著述を続け44歳で没する。日本画家の土田麦僊は彼の兄である。全集第15巻の年譜に拾われている読書歴を見る限りでは、哲学・社会学等は余技で、文明・文化批評の埒内であろう。主力は国文学研究であるように見える。とはいえ、これだけ文化全般に亙って論じ得る知識人は少ないというべきであろう。

 

現代哲学概論 東京 第一書房, 1928.5

「哲学概論」としては異色のもので、時代を論じつつ哲学の案内も計ろうという。ここに言う現代とは、新カント学派が失速し、現象学派が取って代わろうとする時期である。著者は新カント学派に軸足を置いており、過去のものではあるが、継承し得るものと厳しく批判されるべき点とを持つ。【全集第1巻】

 

人間論 東京 第一書房, 1932.9

人間の「地位」的存在性を論じている。人間と、大衆、歴史、自然、存在形態、個性を巡っての考察をしている。【全集第1巻】

 

マルキシズム批判 東京 第一書房, 1930.7

マルクスの根本思想を受け、公式主義的マルキシズムを批判するという。マルクスの理解はその公式主義に引きずられており、受け入れ難いものですが、彼の一面を理解するには必読ではあるでしょう。全集では省かれた章も含まれている。

土田杏村全集(再刊:日本図書センター1982)

第一巻 人生と哲學

 人生論、人間論、現代哲学概論

第二巻 社會哲學及び文化哲学

 社会哲学、社会哲学原論、文化主義原論、文化哲学入門

第三巻 現代思想批判

 思想問題、マルキシズム批判、他8論文

第四巻 思想研究

 日本支那現代思想研究、思想読本

第五巻 宗教と道徳

 宗教論、宗教への闘争、華厳哲学小論功、道徳論

第六巻 教育と社會

 教育目的論、社会教育学概論、現今教育学の主問題、女子教育論、他1論文

第七巻 新経済理論の研究

 生産経済学より信用経済学へ、失業問題と景気恢復

第八巻 文明批評と社會問題

 前篇、中篇、後篇

第九巻 生活と恋愛

 文化と文化生活、恋愛と貞操の問題、恋愛論、結婚論

第十巻 芸術史研究

 第1篇仏教美術研究、第2篇桃山時代障屏画論、第3篇庭園美の研究、第4篇芸術史雑纂

第十一巻 国文学研究

 前篇、中篇、後篇

第十二巻 日本精神史

 日本精神史

第十三巻 文学論及び歌論

 文学論、日本歌論史、上代の歌謡

第十四巻 随筆随想

 明治43年から大正15年まで

第十五巻 随筆随想+年譜

 昭和2年から9年まで、土田杏村年譜、著作目録

 

詳細な著作目録は、松田義男のホームページ「"http://ymatsuda.pro.tok2.com" 松田義男編 年譜・著作目録」のなかの一つとして公開されている。

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