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中村克己1901-51、東京帝国大学哲学科卒、ドイツに官費留学しゲシュタルト心理学を学び、帰国後は思考心理学、科学哲学を研究、1950 東京教育大学教授。収録した判断論関係の論文は、博士号を取った時のもので、雑誌に発表した時には既に、スタンスを哲学から心理学に移し、思弁的思考から科学的研究に向かっている。新カント学派からフッサールまでを読んだ上で科学哲学に舵を切った学者として、現象学と分析哲学との溝渠を渡す橋を示していないか。――本多謙三の「非人称判断に就て」の関連で調べたおりに、Sigwartの翻訳をしているのを見つけ、「Impersonalienに関する論争に対する一 Beitrag」を本多の論文集に附録としてつけたのが、中村氏との出会いです。ドイツ語の頻出でうんざりする論文でしたが、判断論を博士論文にしているということで、読んでみることにしました。判断論としては未完成ですが、雑誌に発表する段階で、これはもう自分の見方ではないとしていることに興味を覚えました。その内実が論理実証主義へ転向ということでは興ざめですが、「Max Wertheimer」への追悼文でも、理論だけでなく、「その人間に教えられるところ」と言うように、単なる、社会事象に超然たる「東大哲学」派あるいは「科学哲学」ではなかったのではないか。

ゲシタルト学説における論理学の諸問題 第1,2部

「ゲシタルトの問題と学説」第四、七輯、内田老鶴圃,1937,1940

Carnap "Abriss der Logistik"

価値と思考:心理学的研究

巌松堂, 1939

ヴィーン学団からみの心理学的な価値論と思考に関する研究の紹介。シュリックらによる論理実証主義で、面白みには欠けるが貴重な記録ではある。

思考過程:心理学的知見

哲学新書、雄山閣, 1948

1940年代の思考・課題解決に関する実験心理学的な研究が紹介されている。要素主義的心理学から離れ、関係性・全体性を見る諸理論が形成された頃の思考過程研究を概括している。哲学的理論から見ると隔靴掻痒の感はあるが、空疎な思弁を離れるという著者の勉強の跡が見られる。

『論理学・科学方法論』

有斐閣,1952

前半は論理学概説、簡単な論理学史から、古典的論理学も紹介し、数学的論理学との対比を詳説。各種の記号論理学(多値、様相、確率論理)を実例で紹介(色々な記号表記が登場した時代の様子を伝える。pdfではHempel,Reichenbachの小論文を加えた)。科学方法論は実験・観察・操作、因果規定、帰納法、帰納演繹法を概説。加えて科学的思考のアリストテレス的と近代的の差異を論ずる。

「中村克己の判断論」

「判断と其対象」『哲学雑誌』第468、469、474号

「Sigwartの判断論について」『哲学雑誌』第472号1926

「非人称命題に関する論争に対する一貢献」『哲学雑誌』第488号&489号1927

「知覚乃至体験と判断」『哲学雑誌』第502号1928

「判断に関する対象現象学的研究」『哲学雑誌』第526、531号 1930-1

「判断の本質に関する論理学的研究」『哲学雑誌』第566、567、568号 1934

論文集

思考過程の実験方法に関する研究

心理学に於けるオペレーショニズムの諸問題

複雑な思考の実験におけるオペレーションについて

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