昭和前期〜思潮〜小文庫
哲学の勉強小部屋
哲学関連の資料を系統分けするという意味も含めて、調べるというより勉強になる公開資料を並べてみます。
哲学概論
波多野精一
大学卒業後すぐ、東京専門学校で講義をするために用意したもので、認識論関連までに過ぎない。それもショーペンハウアーの哲学を述べるという形になっている。未熟だが意欲を読み取って参考にするべきではないか。
西田幾多郎
京都大学で西田が行った講義を元に弟子によって編輯された。単行本としても刊行されているが、全集から。
『明治初期の思想』
淡野安太郎
主要には西洋思想を研究していた著者が、晩年(とは言っても退職間もなく)近代日本の思想史研究を深め、その成果の第一弾を出版するところで病に倒れた。
論理学
本多謙三『論理学初歩』
東京商科大学予科の講義用に書かれた。読み易いとは言い難いが、古いタイプの論理学入門である。すなわち、論理学というのはこういうものを云うのだという戦前の典型である。
Wilhelm Windelband著竹佐哲雄訳『論理学の原理』
新カント学派の中心的人物が百科辞典の一項目として論理学を概説したもの。
池上鎌三『論理学』
第1部は論理学基礎論、第2部は純粋論理学という構成で、オーソドックスな論理学書となるでしょう。著者自身も不満であったように2部構成が成功しているとは見えない。論理学の対象を考察したそれが第2部で生きているか疑問だ。全くの伝統的論理学の概説となっている。論理学の対象に関する試論と、伝統的論理学の語彙解説という2本立てとして、ほとんど掉尾の著作になるのではないか。後半は本多謙三『論理学初歩』と重なる点もあるが、こっちはいわば東大初年生への解説で予科の教科書とは違うぞと云う感じだ。
中村克己『論理学・科学方法論』
前半は論理学概説、簡単な論理学史から、古典的論理学も紹介し、現代的な数学的論理学を紹介している。日本において科学哲学系の論理学紹介としては最も初期に属するのではないか。
認識論=知識学
矢田部達郎訳Ernst Cassirer著「象徴形式の哲学」
矢田部達郎要訳のカッシーラー三部作“Die Philosophie der Symbolischen Formen”。我々にとっての認識=知識とはシンボルの形式としてある。所与をシンボル=言語記号と結びつけるということが出来た、それが人間が言語を持ったということの言い換えであると言う。
批評:高橋里美によるフッサール解説
高橋里美全集第三巻から 「時間・歴史及び弁証法」
高橋里美「認識論」
認識論史の概要から著者の独自考案まで論じて、密度の濃い論文といえるだろう。
各論:池上鎌三「全体・部分・個体」
言語研究基礎資料:久保良英「愛児良毅の教養(父の思い出)」「幼児の言語の発達」
哲学史
西洋哲学史要:若き日の波多野精一の作品
----ドイツ観念論----
久保正夫著『フィヒテの哲学』(第一部知識学)
若くして亡くなったという以外情報のない方ですが、遺稿です。国会図書館にてネット上に公開されている分です。
桑木厳翼著『フィヒテ知識学』
こちらも国会図書館公開で、フィヒテの概要を、著書を短くして紹介したもの。
木村素衛著『フィヒテ』1937
西田門下生による初期のフィヒテ研究。
木村素衛著『独逸観念論の研究』1940
ドイツ観念論の研究関連論文を集めたもの。カント・ヘーゲル関連もあるが主となるのはフィヒテ。
高橋里美による西田幾多郎評
西田哲学
『働くものから見るものへ』、左右田 が西田哲学と評した論文「働くもの」「場所」が収録された論文集です。前後編と分かれているように、本人もここで一つ突き抜けたと自覚しているかのようです。
『一般者の自覚的体系』